STAFF BLOG
スタッフブログ

さくら・はるねクリニック銀座 培養室です。
凍結融解胚移植では、採卵時に凍結しておいた受精卵を移植日に融解し、一定時間培養した後に移植を行います。
胚盤胞凍結の場合、胞胚腔(液が溜まっている部分)の脱水と凍結液への置換が行われるため、凍結前は拡張していた胚盤胞も収縮(shrink)した状態で凍結されます。
そのため、融解後の胚盤胞は収縮していることが多いのですが、移植まで培養液中で回復培養を行うことで、もともとの大きさまで徐々に拡張します。
しかし、融解後に一定時間培養しても、拡張できずに収縮したままの胚盤胞に出会うことがあります。
今回は、融解後~胚移植までの胚盤胞の状態(拡張 or 収縮)が、妊娠成績に影響するかを当院のデータから見ていきたいと思います。
当院の融解~胚移植の流れと観察のタイミング
・8:30~10:30
凍結胚を融解
・11:30~12:30
観察を実施し、報告書の写真を撮影
・14:00~16:30
胚移植を実施
※ 曜日や件数によって多少変動します。
胚を観察するタイミングは上記の①融解直後、②観察、③胚移植直前の3回です。
それぞれの胚の状態は記録しており、それぞれの胚盤胞の状態の違いが妊娠率に影響するかを数値化しました。
融解後胚盤胞の状態の分類
観察時の胚盤胞の状態から、「拡張」または「収縮」に分類しました。
それぞれの定義は下記の通りです。
拡張:胞胚腔が満たされている、孵化中または孵化後の胚盤胞
収縮:収縮している胚盤胞
観察時:融解後の胚盤胞の状態(拡張 vs. 収縮)と妊娠率
まず、観察時の胚盤胞の状態別の妊娠率について検討しました。
融解~観察までの回復培養時間はおよそ2時間~3時間となります。
妊娠率はそれぞれ拡張:43.0%(313/728)、収縮:36.3%(78/221)であり、拡張していた胚盤胞で妊娠率が有意に高くなりました。
胚移植時:融解後の胚盤胞の状態(拡張 vs. 収縮)と妊娠率
胚移植直前に観察した際の胚盤胞の状態別の妊娠率です。
融解~胚移植までの回復培養時間はおよそ4時間~7時間となります。
妊娠率はそれぞれ拡張:42.2%(383/907)、収縮:19.0%(8/42)であり、拡張していた胚盤胞で妊娠率が有意に高くなりました。
また、観察時(融解から2~4時間後)の状態の比較よりもその差が大きくなりました。
当院における胚移植時の胚盤胞の拡張率は95.6%であり、ほとんどの胚盤胞が移植までには拡張していました。
終わりに
融解後、胚盤胞が拡張できずに収縮していた場合、拡張できていた胚盤胞と比較して妊娠率が低下する結果となりました。
同様の検討を行った論文報告はいくつかあり、当院と同じ結果となっています。
一方で、収縮していた胚盤胞であっても妊娠例が複数あることから、移植を実施しない方が良いとは考えておりません。
当院では、胚盤胞自体が凍結融解操作によって変性してしまっていなければ、移植の実施を推奨しています。
さくら・はるねクリニック銀座
培養室
※このデータは当院で2024年4月~2025年4月に単一凍結融解胚盤胞移植を実施した949症例を対象としています。
妊娠率は胎嚢確認/移植で計算しています。