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[宮本院長監修] 患者様からのよくあるご質問 その5

患者様からのよくあるご質問 その5

 

Q 41. 他院で顕微授精(ICSI)を行いましたが、受精率が極端に悪かったです。すると担当の先生から次回からIMSIにしましょうと言われました。これは一体どういうものなのでしょうか?

 

A 41.  通常のICSIでは200倍もしくは400倍の視野の顕微鏡を用いて精子を選んでいますが、IMSIでは1,000倍の高倍率で精子を形態学的に選別します。当初から精子頭部に大きな空胞が存在すると妊娠率や流産率に影響が出ることがわかっていましたが、通常のICSIに比べてIMSIでは正常受精率、分割率並びに良好胚盤胞到達率が有意に高く、胚移植後の妊娠率が向上し、流産率も減少するとされています。このIMSIは当院では先進医療で全員に行う事ができ(初回の体外受精からできます)、料金は22,000円ですが東京都在住の43歳未満の患者様は先進医療の70%が後日助成金として返金されますので自己負担は3割の6.600円です。

東京都以外にも、不妊治療における先進医療の助成を行なっている自治体はたくさんありますので、お住いの自治体にぜひお問い合わせください。

 

Q 42. 他院で先進医療にZymotなるものがあると聞きました。担当の先生から強く勧められたので、これはどういうものですかと聞くと精子に優しいものですと言われました。よく意味が分からないし、そもそも今まで精子に優しくないことをされていたのでしょうか?

 

A 42. これまでの良好精子の選別には密度勾配遠心法という遠心機で回す処置を行なってきました。遠心機で回すというとびっくりされると思いますが、遠心処理後に使用される精子はきちんと運動性があり形態学的にも正常と判断される良好精子です。ただこの遠心操作が精子のDNAを損傷するのではと考えられ開発されたのがZymotです。これは遠心機を使わず、まず精液を精液チャンバーの中に入れ、この上に回収チャンバーがあり、両者はわずか8umの微細な孔をもつ膜で隔てられており、30分間かけて最も前進運動性が高い精子が膜を通って上方に泳いでいきます。運動性の低い精子、膜の孔を通過できない奇形精子、不純物は下にある精液チャンバーに残る仕組みになっています。Zymotで選別された精子を用いてICSIを行なうと受精率、胚発生率、妊娠率が向上したとの報告や受精卵の染色体異常の頻度が低下するとの報告があり非常に期待が持てる治療方法です。当院でも先進医療としてもちろん出来ますが(33,000円、東京都在住の43歳未満の患者様は実質自己負担9,900円)、これはIMSIと異なり初回の体外受精から行う事は出来ません。早くても2回目からでZymotが必要と判断された患者様に限ります。ただし、以前述べたPICSIと併用することも可能です。

 

Q 43. 2022年4月から体外受精が保険になり料金が安くなったと夫と喜んでいましたが、先日テレビで今まで日本では体外受精は自費診療だったのでベストと思われることは全てできた。しかし、保険となったことで、出来なくなったことも多々あり、これまで世界のトップレベルであった日本の不妊治療レベルが低下する恐れがあると有名な偉い先生が言っていましたが本当ですか?

 

A 43. そうですか!日本でも偉い先生がそう仰ってましたか!それでは僭越ながら日本でも偉くない先生を代表しまして私の個人的な見解を述べさせていただきます。

私は体外受精が保険診療になって患者様にとって良くなったことが85% そうではないことが残りの15%と思っています。まず私は長らく国立大学病院で不妊症治療に携わって来ましたが、世間では少子化対策、少子高齢化が日本の最も深刻な社会問題のひとつだと当時の政府が何度となく言いながら、何故100年以上も前からある人工授精(AIH)すら自費診療なのか、何故当時の少子化担当大臣は日本生殖医学会(旧日本不妊学会)に視察に来ないのか不思議でなりませんでした。2022年4月1日より当時の菅義偉総理の肝いりでAIH、ARTが保険診療となったときは万感の思いがありました。

話を戻します

まず保険診療になって良かったこと

  1. 不妊症という疾患が社会全体から癌、感染症などのように一般の病気としてきちんと認識されたこと。
  2. まだまだ不十分ですが社会の認識が変わって患者様が不妊治療のために職場を休みやすくなったこと(以前は職場には歯医者に行くなどの理由をつけて仕事を抜けて通院された患者様が多数いらっしゃいました)。
  3. 不妊症の原因が女性だけでは無いことに社会全体の理解度が増したこと。ARTが保険適応となり不妊症とはどういう病気なのか、体外受精とはどのような治療なのかを取り上げるテレビ、新聞などのマスコミが格段に増え社会全体の知識が増したと思います。
  4. 患者様ご夫婦の経済的負担が軽くなったこと(これについては後述します:Q 44,Q 45)
  5. 不妊症関連の先進医療が多数認められたこと(これについても後述します:Q 46)

不利になったこと

  1. 自費なら可能であった治療が保険では出来ないことが少なからず存在すること(Q47)
  2. 自費診療の時にあった助成金が無くなったこと(Q47)
  3. 御主人の負担が増したことと、御主人が協力的でない場合、奥様は一般不妊治療(体外受精より前の治療)を受ける場合以前より困難となったこと

 

Q 44. 先生は患者様の経済的負担が軽くなったと仰いましたが、保険では3割負担なので自己負担は相変わらず存在するし、収入の少ない世帯や自費診療の時は地方では比較的安価で体外受精を受けられて助成金を貰っていた世帯にはあまり恩恵がないのではないでしょうか?

 

A 44.  確かに保険診療では窓口でその都度治療費の3割をお支払いします。しかし、保険適応になったことにより高額医療費限度額の適応を受けられます。これは世帯収入が少ない患者様ほど恩恵が受けられる制度です。具体的には

  1. 年収約1,160万円~(世帯で標準報酬月額83万円以上の場合)基本的に1か月の自己負担限度額252,600円+(総医療費-842,000円)x1%
  2. 年収約770万~1,160万円(世帯で標準報酬月額53万円以上から79万未満の場合)1か月の自己負担限度額167,400円+(総医療費-558,000円)x1%
  3. 年収約370万~770万円(世帯で標準報酬月額28万円以上から50万未満の場合)1か月の自己負担限度額80,100円+(総医療費-267,000円)x1%
  4. 年収約156万~370万円世帯(世帯で標準報酬月額26万円以下の場合)1か月の自己負担限度額57,600円
  5. 市区町民税が非課税者の場合自己負担限度額35,400円です。

上記のように世帯収入によって1ヶ月に負担する医療費の上限が保険診療の場合決まっておりそれを上回った場合返金になりますので世帯収入が比較的少ない患者様に不利に働くことがないのが日本の保険システムです。

 

Q 45. 確かに思っていたより自己負担金は少ないですね。でも自己負担金0円の患者さんはいないですよね。自費で助成金を受けていたときは地方で安価な病院で体外受精をした場合、一度は35万円前後払いましたが助成金でほとんど後から戻ってきましたよ。

 

A 45.  民間の医療保険に入っていれば話は別です。2022年3月までは体外受精は自費診療だったため数ある民間の医療保険会社から採卵術(卵巣から卵を採る)や胚移植術(子宮に受精卵を戻す)を手術として取り扱ってくれて保険金が下りるのは私の知りうる限り2社だけでした。しかし、体外受精が保険診療となったため採卵術や胚移植術が白内障や痔の日帰り手術と同様の扱いになりました。民間の医療保険に入られている患者様は是非加入されている保険会社に聞いてみて下さい。殆どの場合において保険金が下りると思いますよ。

 

Q 46. 先進医療は、どのようなものがあるのでしょうか?また先進医療は自費だと聞きましたが料金も教えて下さい。

 

A 46.  当院では厚生労働省が認可している不妊症関連の先進医療は殆ど全て行なっています。確かに保険では一定の治療しか認められていないので先進医療を多数認可して不妊治療のレベルが下がらないように工夫されています。それぞれの先進医療についてはこれまでも説明しておりますのでここでは主にその料金をお示しします。

  1. タイムラプスインキュベーター: これは全患者様にお願いしており、必須の装置です。タイムラプスでは、胚を培養する過程を、培養器内のカメラにより撮影した画像を連続して映し出す撮像法を用いて観察します。従来の培養法の観察の仕方では見逃されることがあった胚の分割や成長速度の異常なども見つけやすく、内蔵カメラの使用で胚を庫外に出すことなく観察でき、培養成績、着床率、そして妊娠率の向上が期待されます。個人的にはタイムラプスが無いところではARTをしてはいけないと思っております。(33,000円)
  2. PICSI:これは、ヒアルロン酸を用いて成熟した精子を選別する技術です。ICSIを行う際にPICSIを用いて成熟した精子を選別することで受精率・妊娠率を上げ、流産率を低下させる効果が期待されます。(22,000円)
  3. SEET法:受精卵を体外で培養し、胚盤胞の状態まで育て一旦凍結保存します。この時に、この受精卵を培養するのに用いた受精卵から放出された物質を含んだ培養液も別に凍結しておき、移植を行う周期に解凍して子宮の中に注入します。この培養液に含まれている受精卵からの物質により子宮は刺激を受け、胚を受け入れやすい(着床しやすい)状態になるよう準備を開始し、胚培養液を注入した 2~3日後に胚盤胞を移植するものです。(33,000円)
  4. ERA検査:良好胚の移植を複数回⾏っても妊娠しない、反復着床不成功例に対して⾏う検査です。妊娠において⼦宮内膜が受精卵を受け⼊れる時期が決まっています。この受精卵を受け入れる時期を「着床の窓(Implantation Window)」といいます。つまり子宮内膜に受精卵が着床できる時間や時期には個人差があるため、適切なタイミングで胚移植を行うことで妊娠が可能になると考えられており、この検査では、胚盤胞移植を想定して準備を行い、子宮内膜組織を採取し遺伝⼦レベルを調べることで最適な着床の窓のタイミングを見つけます。(154,000円)
  5. 子宮内膜スクラッチ:胚移植を行う前の周期に子宮内膜に少し引っ掻き傷を2回にわたってつけることにより、着床に対する反応を促進させる方法です。内膜に傷をつける事により、そこを修復させようという働きが起こり様々な物質が分泌され子宮内膜の機能が高まることを想定しています。(2回併せて22,000円)
  6. 2段階胚移植:まず初期胚1個を子宮の中に戻します。この受精卵がシグナルを送り子宮は着床の準備を始めます。その後、胚盤胞1個を着床の準備が整った子宮の中へ移植します。(44,000円)
  7. 子宮内フローラ検査:子宮内フローラとは子宮内に存在する細菌叢のことです。子宮内に様々な細菌がいることが遺伝子解析により発見されており、ラクトバチルス属の割合が高い人が妊娠しやすいとされています。(55,000円)
  8. IMSI:高倍率の観察を行うための専用の顕微鏡を使用することにより、より形態が良好な精子を判別し、顕微授精に用いる治療方法のことです。(22,000円)
  9. Zymot:ARTに用いる精子調整は、遠心分離を用いて良好運動精子を選別する方法が一般的です。しかし、遠心分離を行うことにより精子にダメージを与えてしまうことが懸念され、膜構造を用いた生理学的精子選択術では、精子の特性を利用し、遠心分離を行わず良好運動精子を選別できる方法です。(33,000円)

前述したように東京都は都内在住の患者様は1回の治療(一番長くて排卵誘発開始から採卵、胚凍結、解凍胚移植そして妊娠判定まで)で15万円を上限としてその7割を助成金として返金してくれます(43歳未満の場合)。よってERA検査を行なった場合以外はどれを組み合わせて行っても合計15万円以下ですので自己負担は最大でも4万5000円以下となりますし、これに民間の医療保険金が下りるケースでは自己負担がほとんどない場合もあります。

体外受精が保険診療になって患者様の経済的負担は明らかに軽減したと思います。この点が保険診療になって85%が良くなったと申し上げた一番の理由です。個人的には少子化対策、深刻な問題と言葉では言いながらこれまで不妊で悩む患者様ご夫婦のご負担はあまりに大きかったと痛感致しております。

 

Q 47. 保険になって患者様にむしろ不利になった15%の部分を教えてください。

 

A 47.  AMHが極端に低くて排卵誘発剤の注射に反応しない患者様には飲み薬の排卵誘発剤(クロミッドやレトロゾールなど)を使用します。卵巣年齢が極めて低下して薬が1日2錠では卵が育たない場合にはこれまで1日3錠とし、卵が2-5個とれるケースが少なからずありました。しかし、保険では内服の排卵誘発剤は1日2錠までしか認められておらず3錠にすると自費診療になってしまい、その後の治療もすべて自費診療となり極めて高額となってしまいます。

 

Q 48. 保険になって困ったことは飲み薬の量だけですか?

A 48. 流産を繰り返す、複数回体外受精不成功症例などにて着床前検査を行っていた患者様も以前より治療費が高額となってしまいました。着床前検査は有力な治療法なのですが、現在先進医療として認められているのは大阪府内のごくごく一部の施設のみです(2023年9月16日現在)。よってこれを行うには自費で採卵から開始しなければなりません。2022年3月までもすべて自費でしたが最低でも30万円以上の自治体からの助成金がありました。保険診療になり、この助成金が廃止されたため不育症などで着床前検査を行っていた患者様は以前より自己負担が増えてしまいました。

 

Q 49. 将来子供は欲しいのですが、現在は未婚、もしくは結婚しているが、今は仕事に集中したい、キャリア形成のために仕事を中断したくない。そこで将来に備えて今のうちに卵子凍結しておこうと思うのですが、、、。

A 49. 以前コラムで書いた社会的卵子凍結についてもう一度書きますが、東京都は本格的に働く女性を応援するために卵子凍結の助成金を開始します。2023年9月16日現在一人あたり総額で30万が上限とされています(東京都福祉局ホームページに記載されております)。もう少ししましたら正式に決定しますので決まり次第再度ホームページ上でお知らせします。

高学歴で就職後バリバリ10年以上働かれている女性がいざ子作りを始めようと思い立った時、すでに妊孕性、妊娠する力が落ち始めているケースをよく見かけます。私は今日の未受精卵凍結の技術の高さからキャリア形成のためにすぐには妊娠を希望しない若い女性は30歳になったときに保険をかける意味でも是非卵子凍結をお勧めしております。30歳であれば当院の総額38万プランで十分な数の卵子が凍結出来る可能性が高いです。

社会的適応による卵子凍結について

 

Q 50. 少子化対策で体外受精が保険適応になったと聞いていますが体外受精で生まれてくる子供の割合はどれくらいですか?

 

A 50. 2021年の全国の出生数は81万1604人でこのうちARTよって生まれてきた子供は6万9797人です。11.6人に1人がARTによって出生した子供です。小学校に上がればクラスで3人はいる計算になります。1973年は第2次ベビーブームで出生数は209万1983人でした。その後生まれてくる子供は年々減少し、2016年についに97万7242人と初めて年間100万人以下となり社会に衝撃を与えました。その後想定をはるかに上回るペースで少子化が進み、2019年には86万5239人とついに90万人を割り込み、2022年は77万747人と80万人を割り込み、2023年1月から3月までの出生数は18万2477人で過去最低だった2022年の同時期を5.1%も下回り年間70万人前半と予測されています。一方体外受精によって生まれてくる子供は2008年に2万人を超え、2011年に3万人超え、2013年に4万人越え、2015年に5万人越えと増加の一途をたどり2021年は6万9797人です。自費診療だった時代でも増加の一途でした。体外受精が保険診療となったためARTによる出生数はさらなる増加が見込まれます。少子化対策は待ったなしの状況であり不妊治療の重要性は増すばかりです。

 

 

 

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