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社会的適応による卵子凍結について

現在、日本で体外受精、顕微授精などによって赤ちゃんを授かるご夫婦の大多数(85%程度)は受精した卵を一旦凍結保存し、後日その受精卵〈凍結胚〉を溶かしてから子宮に戻す(凍結融解胚移植)方法がスタンダートであり、その妊娠率も極めて高いです。

一方、未婚の方の未受精卵の凍結は主に癌などの悪性腫瘍の患者さんに将来赤ちゃんを抱くチャンスを残すために始められた医学的適応によるものでありましたが、近年の晩婚化傾向により現在は未婚であるが、将来の結婚後のためにご自身の卵子を事前に凍結希望される患者様も増加しておられます。これを社会的適応と呼びます。では未婚の方が未受精卵を凍結して将来赤ちゃんを抱くことが出来る可能性は一体どれほどなのかをご説明いたします。

35歳以下では凍結出来た卵子が5個で累積生児獲得率(妊娠し、流産せずに赤ちゃんを出産できた割合)は15.4%, 8個で40.8%,9個で50.6%, 10個で60.5%, 15個で85.2%と一般の方が想像されているより遙かに高率です。また患者様お一人お一人で卵巣年齢が異なりますので一概には言えませんが35歳以下であれば1回の治療で通常10個くらいは凍結することが出来ます。なお36歳以上の累積生児獲得率は卵子5個で5.1%, 8個で19.9%, 9個で25.8%, 10個で29.7%、11個で35.6%とされています。
(Cobo et al, Fertil Steril 2016年)

年齢により確かに妊娠率は異なり、お若い方の方が有利なのは事実ですが、36歳以上でも上記の通り十分に将来お子様を抱ける可能性があることは確かです。これは今日までの卵の凍結、融解などの技術の進歩の賜物と思われます。
当院には社会的適応で卵子凍結にいらっしゃる患者様もたくさんいます。少しでも考えている患者様がいらっしゃいましたら一度当院に足を運んでください。

2022年4月より体外受精が保険適応になり患者様の経済的なご負担がこれまでより遙かに少なくなりました。残念ながら、社会的適応による卵子凍結はまだ健康保険の対象外で自費診療となってしまいます。

来院してくださった患者様には料金も含めましてご説明申し上げます。

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