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スタッフブログ
さくら・はるねクリニック銀座
培養室 室長の小林です。
いつも当院をご利用頂き誠にありがとうございます。
7/27~28日に仙台国際センターにて開催された第41回受精着床学会総会・学術講演会に参加してきました。
コロナ明けて初めての現地のみ開催ということもあり、大盛況の学会でした。 私も、久しぶりにお会いする胚培養士さんや先生方と近況報告や様々な情報交換ができ、非常に勉強になりました。
当院からも「子宮内細菌叢は受精卵の胚盤胞発生能に影響する」という演題で口頭発表を行いました。下記にて概要をご説明致します。
【背景と目的】
近年、子宮内膜の常在細菌叢(フローラ)の環境が胚の着床に影響することが話題となっています。 どのような環境が良いかというと、良性菌であるラクトバチルス属菌(乳酸菌のことです)の占有率が高いほど着床率や生児獲得率が高い事が報告されています。また、悪性菌の占有率が高いと慢性子宮内膜炎の原因となり、移植の成績が低下することも報告されています。
しかし、子宮内細菌叢の状態の悪さは子宮内膜のみに影響しているのか?それとも卵巣機能、つまりは卵子の質に影響するのか?という事についてはよく検討されていませんでした。
そこで本研究では、採卵時の子宮内膜組織におけるフローラの状態が、培養成績(受精率や胚発育率)に影響するかを調べました。
【結果】
検討の結果、ラクトバチルス(LB)占有率が低い(90%未満)症例では、胚盤胞発生率が有意に低下し、良好胚盤胞発生率も低下する傾向にあることが明らかとなりました。
(下記図参照)
〇 胚盤胞発生率
LB90%未満:72.6%
LB90%以上:82.6%
〇 良好胚盤胞発生率
LB90%未満:50.0%
LB90%以上:56.8%
※ 胚盤胞発生率および良好胚盤胞発生率は5日目と6日目を合計した数値です。また、良好胚盤胞の定義はガードナー分類で3BB以上としています。
【考察】
この結果から、子宮内膜フローラの状態は子宮内膜のみならず、卵巣機能にも影響を与えている可能性が考えられます。
とはいえまだ症例数は少ないですし、どのような機序で子宮内膜フローラが卵子の質に影響しているかは明らかになっていません。
今後は症例数を増やしつつ、タイムラプスを使用したスコアの違いやeuploid 率、ラクトバチルス占有率改善後の胚移植による着床率などの差についても検討していきたいと思います。
続報をお待ちください。
さくら・はるねクリニック銀座
培養室長 小林